「子どもの通知表、成績上がってるかな」
「通知表って◎の数だけ見ればいいのよね」
通知表の見方がいまいちよくわからない方は、ぜひご覧ください。
令和2年度に通知表は新しい様式に変わりました。
本記事は小学校教員である知人の助言を得て作成しましたので、信頼性の高い記事となっています。
小学校の通知表の見方を詳しく解説します(令和2年度から変更されました)
2002年から絶対評価へ
昔と今の違いから解説します。
今の親世代が子どもの頃は、「相対評価」が採用されていました。
相対評価とは、成績の分布が決められているもので、例えば、5段階評価のうち「5」はクラスの上位5%、「4」は上位20%・・・、といったものです。
したがって、クラスに優秀な児童が多い場合は相対的に成績が低くなってしまいます。
一方で、現在の通知表は「絶対評価」です。
絶対評価とは、個人の到達レベルだけで判断します。
クラスの中でどれくらいの順位かは関係ありません。
教員のホンネ
もっとも、実際の教育現場の声を聞くと、実際どの程度出来ているかを判断する際に、ある程度は「クラスの平均点」を基準とさざるを得ない面はあります。
また、相対評価と違って絶対評価には「◎」「◯」「△」の人数が定められていないため、一般的には評価は甘くなりがちであると考えられています。
というのは、保護者からのクレームが起こりうるためです。
子どもの成績は、本来は単元の内容によっても大きく変わってくるものです。
例えば、1学期は算数が3観点とも「◎」だったとしても、2学期に不得意な分野になりテストの成績が悪かった場合、すべて「◯」になることは十分に考えられます。
しかし、その点を理解していない親は学校にクレームを言います。
なぜ前回と比べて成績が大きく変動しているのか
昨年の担任はいい成績を付けてくれたのに、今年の担任は評価が厳しすぎる
保護者からのクレームを避けるため、前学期や然学年からの変動幅を意識しているのが実際のところです。
小学校の通知表の構成
小学校の通知表は、以下の3点で構成されています。
- 観点別評価
- 行動の記録
- 所見欄
令和2年度からの改正ポイント
新学習指導要領に対応するため、令和2年度から観点別評価の項目が変更されました。
以前は教科別に4つの観点で評価されていたが、3つの観点に変更された
令和元年度まで
- 知識・理解
- 技能
- 思考・判断・表現
- 関心・意欲・態度
令和2年度以降
- 知識・技能
- 思考・判断・表現
- 主体的に学習に取り組む態度
これまで、「知識・理解」と「技能」の2観点だったものが「知識・技能」として1つの観点になり、「関心・意欲・態度」が「主体的に学習に取り組む態度」に変わりました。
小学校通知表の観点別評価の見方
観点とは
3つの観点とは、文部科学省が「育成を目指す資質・能力の三つの柱」のことで、それぞれが相互の関連し合っています。
【参考】学校教育法第30条第2項
生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない。
3つの観点の評価方法
知識・技能の評価方法
具体的な評価方法としては、例えばペーパーテストにおいて、事実的な知識の習得を問う問題と、知識の概念的な理解を当問題とのバランスに配慮するなどの工夫改善を図る等が考えられます。また、児童が文章による説明をしたり、各教科等の内容の特質に応じて、観察・実験をしたり、式やグラフで表現したりするなど実際に知識や技能を用いる場面を設けるなど、多様な方法を適切に取り入れていくこと等も考えられます。
出典:国立教育政策研究所「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」
思考・判断・表現の評価方法
具体的な評価方法としては、ペーパーテストのみならず、論述やレポートの作成、発表、グループや学級における話し合い、作品の制作や表現等の多様な活動を取り入れたり、それらを集めたポートフォリオを活用したりするなど評価方法を工夫することが考えられます。
出典:国立教育政策研究所「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」
主体的に学習に取り組む態度の評価方法
具体的な評価方法としては、ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察や、児童による自己評価や相互評価等の状況を教師が評価を行う際に考慮する材料の一つとして用いることなどが考えられます。その際、各教科等の特質に応じて、児童の発達の段階や一人一人の個性を十分に考慮しながら、「知識・技能」や「思考・判断・表現」の観点の状況を踏まえた上で、評価を行う必要があります。
出典:国立教育政策研究所「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」
これらの3つの観点について、以下の3段階で評価されます。
◯ できた
△ もう少し
少し難しい表現になっておりわかりにくいと思いますので、もう少しかみ砕いて言うと、
知識・技能=主にペーパーテストのうち知識を問うもの
思考・表現・判断=ペーパーテストや普段の授業において思考力を問うもの
です。
なお、主体的に学習に取り組む態度については誤解されがちですが、授業中の挙手の回数など「どれだけ積極的に授業に参加しているか」を問うものではありません。
この点は、「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」でも明確に否定されています。
この観点では、学習に対する「ねばりづよさ」と「調整力」が問われています。
教科ごとの評価方法
では、教科ごとにどのような観点で評価されているか見てみましょう。
ここでは、主要4教科について確認していきます。
国語
知識・技能 | 思考・表現・判断 | 主体的に学習に取り組む態度 | |
3年生及び4年生 | 日常生活に必要な国語の知識や技能を身に付けているとともに,我が国の言語文化に親しんだり理解したりしている。 | 「話すこと・聞くこと」,「書くこと」,「読むこと」の各領域において,筋道立てて考える力や豊かに感じたり想像したりする力を養い,日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め,自分の思いや考えをまとめている。 | 言葉を通じて積極的に人と関わったり,思いや考えをまとめたりしながら,言葉がもつよさに気付こうとしているとともに,幅広く読書をし,言葉をよりよく使おうとしている。 |
社会
知識・技能 | 思考・表現・判断 | 主体的に学習に取り組む態度 | |
3年生 | 身近な地域や市区町村の地理的環境,地域の安全を守るための諸活動や地域の産業と消費生活の様子,地域の様子の移り変わりについて,人々の生活との関連を踏まえて理解しているとともに,調査活動,地図帳や各種の具体的資料を通して,必要な情報を調べまとめている。 | 地域における社会的事象の特色や相互の関連,意味を考えたり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断したり,考えたことや選択・判断したことを表現したりしている。 | 地域における社会的事象につい て,地域社会に対する誇りと愛 情をもつ地域社会の将来の担い 手として,主体的に問題解決し ようとしたり,よりよい社会を 考え学習したことを社会生活に 生かそうとしたりしている。 |
算数
知識・技能 | 思考・表現・判断 | 主体的に学習に取り組む態度 | |
3年生 | 数の表し方,整数の計算の意味と性質,小数及び分数の意味と表し方,基本的な図形の概念,量の概念,棒グラフなどについて理解し,数量や図形についての感覚を豊かにしている。 ・整数などの計算をしたり,図を構成したり,長さや重さなどを測定したり,表やグラフに表したりすることなどについての技能を身に付けている。 |
数とその表現や数量の関係に着目し,必要に応じて具体物や図なを用いて数の表し方や計算の仕方などを考察する力,平面図形の特徴を図形を構成する要素に着目し捉えたり,身の回りの事象を図形質から考察したりする力,身の回にあるものの特徴を量に着目して捉え,量の単位を用い的確に表現する力,身の回りの事象をデータの特徴に着目して捉え,簡潔に表現したり適切に判断したりする力を身に付けている。 | 数量や図形に進んで関わり,数学的に表現・処理したことを振り返り,数理的な処理のよさに気付き生活や学習に活用しようとしている。 |
理科
知識・技能 | 思考・表現・判断 | 主体的に学習に取り組む態度 | |
3年生 | 物の性質,風とゴムの力の働き,光と音の性質,磁石の性質,電気の回路,身の回りの生物及び太陽と地面の様子について理解しているとともに,器具や機器などを正しく扱いながら調べ, それらの過程や得られた結果を 分かりやすく記録している。 |
物の性質,風とゴムの力の働き, 光と音の性質,磁石の性質,電 気の回路,身の回りの生物及び 太陽と地面の様子について,観 察,実験などを行い,主に差異 点や共通点を基に,問題を見い だし,表現するなどして問題解 決している。 |
物の性質,風とゴムの力の働き, 光と音の性質,磁石の性質,電気の回路,身の回りの生物及び太陽と地面の様子についての事物・現象に進んで関わり,他者と関わりながら問題解決しようとしているとともに,学んだことを学習や生活に生かそうとしている。 |
学校によっては、学期ごとに詳しく観点の内容を記載したものをもらえる場合もありますので、通知表と見比べて確認してみてください。
所見欄も忘れないように
つい学習面ばかりに目が行きがちですが、所見欄も忘れずにチェックしてください。
むしろ、低学年ほど所見欄の重要性は高くなります。
所見欄は大きく2つの事項について書かれています。
- 生活の様子
- 学習の様子
特に生活の様子についてどのように書かれているかチェックしましょう。
普段の生活面に問題のある児童は、学年が上がるにつれて学習面でも問題が出てくるケースがあります。
学校での様子や精神面での成長を知るよい機会となります。
通知表の見方のコツですが、先に所見欄など生活面が書かれた右ページから見て、まず褒めるようにしましょう。
今後の学習への生かし方(通知表を見た後に)
大事なのは“これから”だ
通知表は、子どもの学習の理解度の現在地を知る上では重要な指標になります。
しかし、あくまでも現在地であり、その学期の学習状況を積み上げた結果です。
次の学期には新たな学習が始まります。
したがって、次の学期になってもいつまでも過去の成績に縛られるのではなく、これからを見据えて新しいスタートを切る必要があります。
子どもの理解度を確認しよう
「◎」などの評価に一喜一憂するだけでなく、その評価に至った理由を分析しましょう。
その際に参考になるのが過去のテストです。
ボクは学期ごとにテストやプリントファイルを作り保管しています。
テストには、観点別に点数の配分があります。
テストの欄外に書いてあるので、単元ごとに確認しましょう。
すると、「漢字が苦手」や「自分の考えを述べる問題が苦手」など、子どもの詳しい理解度が浮かび上がってきます。
理解していない単元を復習しよう
テストを確認した際に、もう一つ確認してほしいのが単元ごとの理解度です。
例えば、算数の「知識・技能」が「◎」だったとしても、単元ごとに見ると、「三角形の面積:○」「割合:◎」という偏りがあります。
通知表を確認したあとは、子どもが理解していない単元をきっちり復習するようにしましょう。
予習・復習に効果的な教材はこちら。
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通知表の成績が悪かったときの対処法については、こちらをご覧ください。
小学校の通知表についてのぶっちゃけ
最後になりますが、何人かの教員の友人に聞いた通知表の付け方についての共通した意見として、「△(=C)評価」は付けにくいということがあります。
親からクレームが来るかもしれない
特にこれまで「△」のなかった場合、親からのクレームは覚悟しなければなりません。
その際に、明確に説明できる自信があればよいのですが、すべて合理的に説明できない場合もあります。
学校側としては、下手なクレームが来るよりは無難に収めたいという発想が出てしまいがちです。
先生だって嫌われたくない
もう一つ怖いのが、「逆恨み」です。
「△」を付ければ、場合によって子どもから恨まれることもあります。
やはり先生としても、子どもから嫌われたくないという気持ちがあります。
このように、いろいろな配慮の結果、「△」評価はできるだけ少なくなる傾向があります。
コロナ禍で通知表の付け方は変わったの?
令和2年度は、学校の休校からスタートしたように、新型コロナウイルスによって学校のあり方も大きく変わりました。
コロナ禍では、通知表の付け方にも変化があったのでしょうか。
基本的には大きな変化はない
新学習指導要領による評価基準がコロナによって変更があったわけではありません。
ただし、評価の材料がこれまでとは異なってきます。
例えば、コロナ禍においては水泳の授業を行わない学校は多くあります。
水泳の有無は、そのまま1学期の体育の成績に直結します。
また、分散登校等が増加した場合、グループによる話し合い活動にも変化が出ます。
これまでは、グループ活動において、どのような発言をしたり、班のまとめ方ができるかも評価の判断材料となっていました。
しかし、話し合いを自粛する学校では、その点を判断材料とすることはできなくなります。
タブレット導入により今後の動向に注意が必要
もう一つ、コロナ禍により一気に加速したのがタブレット学習です。
GIGAスクール構想の名の下に、一人一台タブレット支給が進められています。
授業でもどんどん活用されています。
これまでは紙で提出していた課題も、タブレットで提出することも出てきました。
また、タブレットを使った調べ学習の機会も増えていますので、これからはいろいろな場面でタブレットをいかに活用できるかが新たな判断材料となってくるでしょう。
また、小学校で特に苦手の子が多い算数についても、タブレット学習導入により勉強の方法に変化が出てきています。
小学校の通知表の見方まとめ
通知表の成績に親も子どもも一喜一憂してしまいがちですが、「◎」の数だけでなく、観点別評価の内容を理解することから始めましょう。
さらに、所見欄もしっかりと確認し、普段の様子を褒めてあげましょう。
また、通知表は現在地を知るためのものなので、これからの学習にしっかりと役立てましょう。
次の学期になる前に、苦手な単元はしっかりと復習しておくとよいですね。
「◎」が少なくて悩んでいる人はこちらをご覧ください。
中学校の通知表の付け方はこちら。
例えば、進研ゼミは毎年100万人以上の小学生が受講しています。
さらに、これからの時代、子どもの将来の選択肢を広げるためには、プログラミング技術は必須となってきます。
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コメント
[…] 最近の通知表は絶対評価のため、よほどののとがなければ△は付きません。 したがって、△があるようならば早急に対策を打つ必要があります。 通知表の見方はこちら。 https://jissenpapa.com/2021/03/14/%e5%b0%8f%e5%ad%a6%e6%a0%a1%e3%81%ae%e9%80%9a%e7%9f%a5%e8%a1%a8%e3… […]
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